脱規模の経営をめざして

読んで欲しい人

読んで得られること


スクラムを生み出したサザーランド博士、制約理論を生み出したゴールドラット博士が参考にした…トヨタ自動車副社長、大野耐一さんの名著です。

40年以上前に書かれた本なの…今読んでも、全く色あせておらず…とても有用なビジネス書であり続けています。読んでみると…なるほど…スクラム制約理論に出てくるマインドセットが大量に語られています。ぜひ「ザ・ゴール」と合わせて読んで欲しい一冊です。

当時…職能型組合が強い欧米に対して、日本の方が(それでも抵抗は多かったようでですが)多能工化がやりやすかった…というくだりは、スクラムにおけるT型人材の重要性と同時に「日本もジョブ型採用を取り入れるべきだ!」という流れに反して、欧米で「日本のメンバーシップ型採用も良いのでは?」と見直す動きが出ている現状へのつながりを感じます。

トヨタ自動車の前身である豊田自動織機時代から…機械には問題が起きると機械が止まる…つまり不良品を作らない豊田佐吉さんが考案した仕掛けが、組み込まれていました。これはスクラムパターンでいう「ハウスキーピング」…今どきのテスト駆動型開発のような考え方を、戦前からされていたということです。スクラムの研修で今日でも語られる「Just In Time」は、トヨタ自動車工業の創業者…豊田喜一郎さんの発案だったとは、その先見の明に驚きます。

有名な「5回のなぜ」「7つムダ」…特に積極的にムダを排除する方法については深く語られていますので…学びは深いです。「自動車工場にロボットや自動機器を導入するだけで、生産性が上がるわけではない。むしろ下がる可能性も…」というくだりは、今のIT業界でも耳が痛いテーマです。

しかし、本書が世にでて40年以上経っても「まとめてやる方が生産性が高い」「人は在庫を貯まると安心する」という生産性と逆行する行動は減っていないように思えます。耐一さんはこれを「農耕民族」と説明しています。我々のDNAに刷り込まれた農耕民族マインドが原因であるなら、その克服は大変なのかもしれません。

耐一さんは、とても例え話が上手で…

など…参考になる話がたくさん出てきます。ビックバン変革の難しさと段階的アプローチの重要性も語られていますし…きっと「チェンマネ」に苦労して…色々な例え話を編み出したのではないか?と想像します。

中盤は、トヨタ自動車工業の歴史の話もたくさん出てきますが、「スクラムの起源」だと思って読むと…今に活かせる学びがたくさんあります。

フォードT型の大量生産に成功し…ウォーターフォール型大規模量産だったフォード式と、アジャイルに近い…トヨタ生産方式の比較も触れられています。しかし耐一さんは、ヘンリー・フォードは…トヨタ生産方式に近い考え方をしていて…その後発展したアメリカ型の大量生産の発展は…彼の意図とは違っていたのではないか?という考察も興味深いです。

名著はいつまでも色褪せない…見本のような本です。スクラムの理解を深めるために…必読の一冊です。

本書はオーディオブックで聞くのもオススメです。