新商品をブレイクさせる「超」マーケティング理論

読んで欲しい人

読んで得られること


キャズムはハイテク企業のマーケティング理論として有名ですし、「アーリーアダプター」とか「ビジョナリー」といった用語を聞いたことがある方も多いのではないかと思います。そのキャズム理論を詳しく解説した本です。

Scrum Inc.RPO研修で、ビジョンステートメント(本書では「エレベータテスト」「ポジションステートメント」という言葉が使われています)を立てる際に「Crossing the Chasm」が紹介されますが、その最新版です。序文にも書かれていますが内容は初版と変わっておらず、事例が細心化されてわかりやすくなっているので、こちらだけ読むのオススメです。

2013年の本なので…もう10年経ちました。ですので最新事例と言い切るのも微妙ですが…十分わかる企業群の事例ですので安心して読んでいただければと思います。むしろ2013年時点で「まだキャズムを超えられていないテクノロジー」が、今どうなったのかを考えながら読むと感慨深いものがあります。世の中は進化して、キャズムはもう古いという論調もありますが、ジェフリー・ムーアが語っているように…まだまだ使える考え方だと思います。スクラム関係者、特にPOに読んでいただきたい内容になっています。

キャズム理論は、ハイテク企業だけでなく「新製品を広めるあらゆるシーン」で適用できる考え方です。つまり「非ITな新商品マーケティング」や「新システム導入などにおける社内向けチェンジマネジメント」にも使えます。

キャズム理論では、ユーザー以下のように分類します。

これは、スクラム的に見ると…製品マーケティングの段階によってペルソナ(本書では「ターゲットのキャラクタライゼーション」という言い方をしています)の持つペインポイントとゲインポイントが変わるものだ…ということです。狩野モデルと合わせて考えると、MoSCoW分析のような単純な視点を超えて、より良い優先順位付けのヒントになります。

アーリーアダプターからアーリーマジョリティの間にある大きな崖(=キャズム)を越えるには、マーケットのセグメンテーションが必要だと語られていますが…このセグメンテーションについては、ザ・ゴール2を合わせて読むと理解が深まります。橋頭堡となるターゲットセグメントの絞り方は、PBI(プロダクトバックログアイテム)のスライスを考える上で参考になります。

レイトマジョリティを取り込む方法については、チェンジ・ザ・ルールをあわせて読むと理解が深まります。

本書の中で、PO研修でも流されるサイモンシネックのTEDトークで語られた、「自分が提供するものを必要とする人とビジネスするのではなく、自分の信じることを信じる人とビジネスするのを目標とすべきなのです」という名言を紹介しています。まさにその通りだと思います。

キャズム2の付録として、GAFAの台頭…フリーミアムモデルなど考慮しインターネットビジネスのB2Cマーケティングをまとめた「フォー・ギアズ・モデル」についても解説されています

優先順位は、製品を使うユーザーだけでなく…あらゆるステークホルダのことを考えて決める必要があります。そのために必要な視野を与えてくれるPO必読の一冊だと思います。

本書はオーディオブックで聞くのもオススメです。