95%の人が見過ごす「小さな進捗」の力

読んで欲しい人

読んで得られること


スクラム研修では、スクラムパターン(≒ 成功に導く必勝パターン)の一つとして幸福指標を紹介しています。本書は、幸福理論をより深く理解する手助けになります。といっても…本書では「幸福」という言葉は出てきません。「インナーワークライフ」という言葉が使われています。これは「仕事に対して感じている充実感」を指していますので、スクラムパターンでいう幸福と同義だと思っていただいて良いと思います。

スクラム研修では「幸福なチームはより早く良い仕事をする」「幸福指標はパフォーマンスの先行指標となる」と紹介されます。つまり「チームが幸せに仕事をする」ことがスクラムマスターの目標達成につながり、幸福指標を測ることでパフォーマンス低下を予測して事前に手を打てる…ということです。となると「どうしたらチームは幸せに仕事ができるのか?」を具体的に知りたいですよね。

本書の原題の「The Progress Principle」を直訳すると「進捗の原則」となります。サブタイトルの「Using Small Wins to Ignite Joy, Engagement, and Creativity at Work」は、「小さな勝利を利用して、職場での喜び、責任感、創造性に火をつける」と訳せます。つまり「チームは仕事が進捗すると幸せになる」ということになります。

「幸せになれば、仕事が進む」「仕事が進めば、幸せになる」…これだけだと、言葉遊びのようですが…本書を読むとその意味を理解できると思います。

チームの幸福を高める具体的な要素として、7つの触媒ファクターが紹介されています。じつはこのファクター…すべてスクラムに組み込まれているといえます。

■触媒ファクター

つまり、スクラムは「幸せに仕事をするためのフレームワーク」であり、本書から「幸せになる理由」を学ぶことで…より効果的に運用できるようになると思います。

本書はビジネス書であると同時に「研究成果をまとめた論文」でもあるため…後半は「いかに情報を集めて科学的に評価したか」について解説されています。その中で協力者に書いてもらった日誌の話が出てきます。日誌を書いてもらう…という行為は、協力者にとっても「個人的なレトロスペクティブ」に繋がっていた…という事実も興味深いです。ネガティブな事象をしっかり受け止めて学びに繋げる…サポートの有無、進捗の有無、感謝や悲しみ…チームのレトロスペクティブを深めるためのヒントも多くあります。

幸福指標を計測していると「炎上気味の方が幸福度が上がる」時もあります。これを「多少ストレスがかかる状況の方が生産性が上がる」と受け取ってしまう方もいますが、それは「価値ある仕事がしっかり進捗している」「火消しのためリーダーシップからのサポートが受けられている」からであることを理解する必要あります。スクラムマスターや組織のアジャイル化を考えるリーダーに、是非読んで欲しい一冊です。

本書はオーディオブックで聞くのもオススメです。