マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現

読んで欲しい人

読んで得られること


本書ではScrumではなく(一回だけアジャイルソフトウェア開発も似ている…という表現がありますけど…)ホラクラシー組織について書かれています。しかしその文化や考え方はScrum@Scaleに通じる部分が多いです。体系的かつ事例も豊富にかかれているので、Scrumな組織を考える際にとても参考になる名著です。

本書には理想論が書かれているのではなく、多くの調査結果に基づく分析と、成功だけでなく失敗も含め…完全なティール組織からハイブリッドな形態まで数多くの示唆に富んだ事例が収められています。

本書の冒頭では…人類誕生初期からの組織の在り方の歴史がまとめられています。そういった視点で見ると…人類はまだ中世や産業革命時代の考え方を引きずっていたり、「会社勤めが当たり前になったのは最近なんだなぁ…」と思えます。

組織なんてない時代から、神秘的な概念でまとまり暴力で支配し役職に権力をもたせ成果主義から価値を重視する文化へ…
そんな人間の進化の歴史は納得感のある整理ですが、その次の段階として複雑さに対応するために現れたのが「進化型パラダイムティール組織)です。複雑さに対応、個人主義からチーム主義へ、内省(失敗から学ぶ)、創造的…Scrumと同じですね。

オランダのビュートゾルフが大切にしているルールは…自己組織化、12人以下の小さなチーム、マネージャーではなくコーチ、SNSによるコミュニケーション、明確な存在理由の定義…とてもScrumに似ています。

スクラムに懐疑的は人は、人を機械であるかのように計画する達成型パラダイムの呪縛に縛られている気がします。アインシュタインは、「問題は発生したのと同じ次元では解決できない」(We cannot solve our problems with the same thinking we used when we created them.)と言っています。思考様式を変えるハードルは高いですが、そうしないと問題は解決できません。

農業でも大まかな生産計画を立てますが、日々作物と向き合い、確認調整して…最高の結果を目指して再計画し続けますよね。作物の状態も見ずに最初の計画通りの対応をしても、良い作物ができないことは誰でも想像がつきます。

計画経済に限界があり、自由市場のメカニズムを信じているのに…なぜ組織にそのメカニズムは取り入れられないと思うのでしょうか?

電力会社のAESの事例では、「その地域にそのやり方は合わない。なぜなら…」と言われて、地域性が問題になったことはない(合わない個人はいますけど)…という話も、Scrumと同じだと感じました。

この文化を育てるのに重要なのはリーダシップの考え方です。チェンジマネジメントをしつつ、価値あるビジョンを提示し、自己組織化の文化を守っていくというのは、凄まじく重要な役割を担うリーダーシップの多くは、「指示する」「決定する」「優遇される」という既存の権力を手放すことばかり気を取られがちです。

巻末付録には、さまさまな業界に、進化型パラダイムを適用するためのヒントが書かれています。

「Scrumは、日本に向いていないのでは?」「Scrumは、私の業界に向いていないのでは?」ということではなく、もっと大切なことを教えてくれる一冊です。

本書はオーディオブックで聞くのもオススメです。