マネジメントのためのScrum入門

顧客にとってのAgile

2022/07/30

今更ながら顧客という言葉の定義

自分が勢いで書いた記事を読み返し…「顧客」って言葉の使い方が雑でした…ごめんなさい。

アジャイルマニフェストやスクラム研修や関連書籍で言う「顧客」は、プロダクトやサービスの「ユーザー」を中心としたステークホルダー全体を指すことが多いです。しかし日本のIT業界における伝統的な「受託開発モデル」における発注者、受注者の関係性で言う「発注者」のことを「顧客」と言うような記事も区別せずに書いてました…。

そのうち内容を見直しますが、とりあえずこのページでは「顧客=発注者側」という定義の元、「顧客にとってのAgile」を語ろうかと思います。

自分たちは本当に…得をしているのか?

前回の記事で、日本の「顧客」の…ITをモノ扱いして丸投げする体質について触れました。その体質の影響で、開発の依頼には「準委任契約」より「請負契約」が好まれる傾向にあると思います。

人材と期間を決めて契約する準委任契約は、「予算と納期は決まるが、作る機能(の量)は保証されない」とも言えます。請負契約だと最初に「作る機能」も最初にロックした上で保証します。ITをモノ扱いする発注者から見ると「プロジェクトを始めるべきか…最初に判断しやすい」のは請負契約になります。いくらで何が手に入るか、最初に確定できます。

しかし発注者側が欲しいのは、「納品された機能」ではなく、「納品物が生み出す価値」であるはずです。どんどん変わっていく世の中で普遍的な価値を生み出す機能を…最初に定義しきるのは、ほぼ不可能です。つまり最初に「作る機能を決めてしまう」のは…以前書きましたが「全力でゴミ捨て場に走る」行為に近いといえます。

顧客は「開発会社から最大のアウトプットを引き出す」のではなく、「製品から最大のアウトカムを得る」ことを考えなくてはなりません。

どうして多くの大企業はイノベーティブになれない?

こういったITに対する受発注の構図を考えていると…大企業は、スタートアップに比べてイノベーティブになれない理由がよくわかります。

スタートアップは、何か実現したいビジョン…それがもたらすアウトカムを明確に持っています。プロダクトはビジョンを実現しアウトカムを得るための手段であり…常に進化し続ける必要があります。「最初に何を作るか考えて、費用見積もりからROIを計算して、判断の上実行して終了」ではなく、自ら進むべき道としてプロダクト開発に関わります。

一方、大企業では「本業以外の新規事業を今年中に1つは始める」といった…ビジョンがないのに期限だけある「プロジェクト」を起こしがちです。期限内に作れるモノを考えて…見積もり…開発を依頼する。開発会社に依頼されたのは「最大価値を生み出すこと」ではなく、「納期通りに予算内で予定されたいたものを作る」ことになります。依頼された開発会社は価値を生み出しても何の得にもなりません。

これではイノベーティブなプロダクトが生まれるワケもありません。

なんでこうなってしまうのか…

  • Whyを大事にしていない

  • 目的と手段が整理できていない

  • 優先順位とは何かわかっていない

これらのことを考える文化がないのだと思います。

「今年中に1つ、新規事業を立ち上げる」という目標は…新規事業開発に勢いをつける手段であり…目的ではないんです。

  • イケてない新規事業を今年中に立ち上げる

  • イケてる新規事業を数カ月後に立ち上げる

どちらが目的に沿うのでしょうか。

  • 納期最優先で、年度内で間に合うことを必須条件として新規事業を計画する

  • イケてる新規事業を立ち上げるため、小さく作ってフィードバックループを回す。年内は目指すものの最優先なのはイケてる新規事業に仕上げること

どちらが経営層が求めているのでしょうか?

逆に経営層は…そういうメッセージをちゃんと伝えられているのでしょうか?

物事の優先順位をもっと本質的に突き詰める…それがAgileなんだと思います。

優先順位の考え方については次回に…