2021/4/30
Agileに関わる仕事をしていて思うことを…徒然なるままに残します。
スクラムマスターの資格研修のco-TrainerやDXコンサルティング業務を通じて聞く話…世の中に溢れるたくさんのアジャイルに関する記事を読む中で、「アジャイル」という言葉の解釈が広すぎると感じています。
今に始まった話ではないのですが…なかなか整わないものですね。
よく見かける…「不確実性の時代だからこそ、Try & Errorで、本当のGoalを見つける手法が必要」という文脈に対して「仕様が決まっている案件はアジャイルでやる意味ないですよね」という議論。
私は、アジャイルという思想が生み出す効能って大きく3つなんだと思っています。
本当のGoalにたどり着くための素早い意思決定を行う方法論
チームワークを高めて生産性向上を目指す方法論
より正確に見積もる方法論
これらを混ぜて考えると理解が深まらないと感じています。この点について少し書いてみたいと思います。
1)について
アジャイルは「早い」つまり納期が縮まるとか、無理を聞いてもらえるとか…そういった誤解が多すぎると感じます。「全力でまっすぐ突っ走ってゴミ捨て場にたどり着く」のではなく「素早く周りを確認して、多少時間がかかっても…宝を見つけ出す」のがアジャイルな考え方なわけです。関係者全員がこの認識を持たないと…いびつな仕事になってしまいます。
宝を見つけ出す
宝にたどり着く
この2つを同時にやるのは、アクセルとブレーキを同時に踏むような…矛盾が生まれます。Scrumでは、この矛盾と付き合うルールが定義されています。
本当に最初からゴールが正しいのであれば(そんなプロダクト…本当はない気もしますが…)この効能は不要であるとも言えます。しかし素早さは、アジャイルの効能の一部でしかありません。
2)について
アジャイル…特にScrumには、働き方改革・生産性改善の要素があります。その一番の肝は「チームワーク」です。
すでに1人前のエンジニアが、個人の努力で生産性を上げるには限界があります。ただチームの生産性は何倍にも挙げられる余地があります。それがScrumの面白さです。
たまに「1人でアジャイルしてみるにはどうしたら良いですか?」といった質問や支援導入依頼を受けることがあります。もちろんチームワークは「アジャイルの効能の一つ」なので、他の効果を狙う手はありますが…やはり効果は限定的になります。
Scrumでは小さいチームを推奨しています。ですので「100人のチームではどうすれば良いのですか?」という質問もよく受けます。100人のチームっておそらく「同じプロダクトの作業を別々にやっている100人の個人」であって、本当のチームではないと思うんです。
アジャイル(特にScrum)はチームワークとは何かを考え直す、良い題材だと思います。
3)について
「Scrumではどうやって納期を約束するのですか?」といった質問を受けることも多いです。
アジャイルって「素早く変化に対応する」から、無計画と思われるのでしょうか?きちんとScrumを理解して実行できれば、従来の手法よりずっと正確な見通しを立てられます。そして何度も見直し続ける仕掛けがScrumにはたくさん盛り込まれています。
ウォーターフォールなプロジェクトであっても、アジャイルな見積もり戦略は有効です。
大規模プロジェクトで、関係者全員のマインドセットを変えるのが難しい場合でも…アジャイルな見積もり戦略だけ採用するのは有効です。
世の中でアジャイルという言葉は1)の文脈で使われることがあまりに多く、本質的な活用に進まないケースが多いので、チームワークや見積もり手法の観点でもっと検討が進めば良いのに…と思う今日この頃です。
とりあえず、初回はこんなところで…